立地の悪い飲食店の集客は、何から始めるか
— 「SNSを頑張る」の前に、自分の店の“悪さの種類”を特定する
「うちは立地が悪いので、SNSを頑張るしかない」
開業相談でも、既存店の集客相談でも、この言葉をよく聞きます。気持ちはわかります。ただ、ここには順番の飛ばしがあります。
「立地が悪い」は、ひとつの状態ではありません。まったく違う四つの欠陥が、同じ言葉でくくられているだけです。そして、それぞれ効く手が違います。診断を飛ばして「とりあえずSNS」に走るから、頑張っても手応えが出ません。
「立地が悪い」には四つの種類がある
立地の悪さを分解すると、だいたい次のどれか、あるいは組み合わせです。
- 視認性が悪い:前は通るのに、店の存在に気づかれない
- 動線から外れている:そもそも人がその前を通らない
- 商圏が薄い:通る人はいるが、絶対数(母数)が足りない
- 認知されていない:条件は悪くないのに、知られていないだけ
この四つは、症状は似ていても原因がまったく違います。だから、同じ「集客施策」を当てても、効く店と効かない店に分かれます。自分の店がどれなのかを先に決めないと、打ち手はただの当てずっぽうになります。
立地商圏10の要素で分解している項目のうち、どこがボトルネックになっているか——それが「悪さの種類」です。
視認性が悪い店:気づかせる問題
前の通行量は十分にある。なのに入らない。この場合の敵は「無関心」ではなく「無認識」です。存在に気づかれていないだけなので、やるべきは説得ではなく発見の支援です。
看板を大きくする、というのは半分正解です。本当に効くのは、店の正面ではなく歩いてくる人の視線が最初に届く位置に、店があることを予告する要素を置くことです。角地の袖看板、少し手前の路面サイン、夜なら灯り。SNSより先に、この物理的な発見動線を直すほうが安く速く効きます。
視認性は現地に立たないと測れません。図面上は良く見えても、実際に客の歩く速度で歩くと看板が街路樹で隠れている、といったことは頻繁にあります。物件現地調査のポイントは、この“歩いて確かめる”作業を具体的に扱っています。
動線から外れた店:目的地になる問題
そもそも前を人が通らない。空中階、地下、路地裏、住宅街の奥。この立地は視認性をいくら磨いても限界があります。通らない人には、看板は見えないからです。
ここで初めて、Webの出番になります。動線から外れた店の生きる道は「ふらっと入ってもらう」を諦めて、目的地にすること。つまり、来る前から店を知っていて、わざわざ選んで来てもらう構造をつくる。指名で検索される、地図で見つけて予約される——この“わざわざ来てもらう”導線は、リアルの通行量とは別の商圏をつくる作業です。
注意したいのは、これはSNSを頑張ることとイコールではない、という点です。目的地化に必要なのは投稿の量ではなく、探されたときに見つかること・選ばれる理由が伝わることです。そして、それを強化する前に立地側で確かめることがあります。動線から外れていても“わざわざ来る理由”になる強みが本当にあるか、です。それが無いまま集客だけ強化しても、一度は来ても来店は続きません。
商圏が薄い店:母数を変える問題
通行はある。気づかれてもいる。それでも客が足りない。この場合は、商圏そのものの人口が足りていない可能性があります。
薄い商圏で施策を積んでも、母数の天井は動きません。ここでの打ち手は二つです。ひとつは商圏を広げる——広域から来てもらう強い理由(専門性・希少性)をつくる。もうひとつは商圏を作り替える——デリバリーやテイクアウトで、店の物理的な半径とは別の“見えない商圏”を持つことです。
デリバリーは単なる追加チャネルではなく、薄い立地の弱点を商圏の作り替えで打ち消す手段になり得ます。この考え方はデリバリー業態における“見えない商圏”の可視化術で詳しく書いています。
認知されていない店:知られる問題
最後に、実は立地条件は悪くないのに「悪い」と思い込んでいるケースがあります。オープンして日が浅い、看板が地味、ネット上の情報が薄い。条件は足りているのに、単に知られていない状態です。
これは四つのなかで最も回復が速い症状です。やることは、存在情報を検索とマップに正しく置くこと。開店直後の店なら、集客の前に新規出店直後の店舗運営で書いた、認知が立ち上がるまでの動き方を優先すべき段階かもしれません。
順番を間違えないこと
まとめると、順番はこうです。
- まず「悪さの種類」を診断する(視認性/動線/商圏/認知)
- 視認性なら、現地の発見動線を直す
- 動線なら、目的地化してWebで探されるようにする
- 商圏なら、広域集客かデリバリーで母数を変える
- 認知なら、存在情報を正しく置く
「立地が悪いからSNS」は、この診断を全部飛ばして、動線から外れた店の処方だけを全員に配っているようなものです。あなたの店の悪さがもし視認性や認知なら、SNSに費やす労力は、もっと安く速く効く場所に回せます。
立地の悪さは、正しく分解すれば、必ずどこかに手当てのしどころがあります。まずは自分の店がどの種類なのかを、正直に見極めるところから始めてください。
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